子宮体癌
子宮体癌の組織分類
1.類内膜癌 endometrioid carcinoma
①類内膜腺癌 endometrioid adenocarcinoma
正常子宮内膜腺に類似した形態を示す癌腫をいう。類内膜腺癌は子宮内膜癌のなかでは最もよくみられる癌である。
②扁平上皮への分化を伴う類内膜腺癌 endometrioid adenocarcinoma with squamous differentiation
良性ないし悪性の形態を示す扁平上皮への分化が局所的にみられる類内膜腺癌をいう。
腺扁平上皮癌 adenosquamous cell carcinoma
腺棘細胞癌 adenoacanthoma
類内膜癌は腺癌成分の形態により、Grade 1、2、3に分類される。分類の指標は、構造異型と細胞異型の異型の程度であり、細胞異型では特に核異型が重視される。
類内膜腺癌では、細胞異型の程度は構造異型の程度と並行することが多い。構造異型によるGradeに不釣合いな著しい核異型を示す場合は、構造異型からはGrade 1であってもGrade 2に、同様にGrade 2はGrade 3と判定する。扁平上皮への分化を伴う腺癌のGradeは腺癌成分によって判定する。
漿液性腺癌 serous Adenocarcinoma
乳頭状に入り組んだ構造と細胞の芽出を特徴とする腺癌で、しばしば砂粒体を伴う。漿液性腺癌の組織学的なGradeは核異型により判定する。
2.明細胞腺癌 clear cell Adenocarcinoma
主に明細胞ないしホブネイル細胞からなる腺癌で、充実性、管状嚢胞性、乳頭状ないしこれらの混在した組織構造を示す。
明細胞腺癌の組織学的なGradeは核異型により判定する。
3.粘液性腺癌 mucinous Adenocarcinoma
粘液性腺癌は通常は高分化型腺癌で、子宮頸部の粘液性腺癌に類似する。
4.扁平上皮癌 squamous cell carcinoma
扁平上皮に類似する癌腫である。子宮内膜では扁平上皮癌はまれである。扁平上皮癌の組織学的なGradeは核異型により判定する。
5.混合癌 mixed carcinoma
複数の組織型が混在する癌腫で、各成分は腫瘍全体の少なくとも10%を占めるものをいう。
6.未分化癌 undifferentiated carcinoma
上記のいかなる組織型にも該当しない未分化な癌をいう。
****** 発生機序による分類
・Ⅰ型子宮体癌
発生機序:unopposed estrogenの長期持続により、子宮内膜異型増殖症を経由しそれが癌に至るもの
好発年齢:閉経前~閉経早期
頻度:80~90%
病巣周辺の子宮内膜異型増殖症:あり
組織型:類内膜腺癌
分化度:高分化型
筋層浸潤:軽度
予後:比較的良好
遺伝子:K-ras(癌原遺伝子)、PTEN(癌抑制遺伝子)の変異が高率で見られる
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・Ⅱ型子宮体癌
発生機序:子宮内膜異型増殖症を介さないで癌化するもの(de novo癌)
頻度:10~20%
病巣周辺の子宮内膜異型増殖症:なし
組織型:漿液性腺癌、明細胞癌など
分化度:低分化型
筋層浸潤:高度
予後:不良
遺伝子:p53(癌抑制遺伝子)の変異が高率に見られる
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子宮体癌の進行期分類
子宮体癌の進行期分類は、日本産科婦人科学会(日産婦)では、治療前の進行期分類として、臨床進行期分類(日産婦1983、FIGO1982 )とUICC(International Union Against Cancer)によるTNM 分類、術後分類として、手術進行期分類(日産婦1995、 FIGO 1988)とUICCによるpTNM 分類(内容はTNM 分類に準ずる)を採用している。
A. 手術進行期分類(日産婦 1995,FIGO 1988)
0 期 子宮内膜異型増殖症
Ⅰ期 癌が子宮体部に限局するもの
Ⅰa 期 子宮内膜に限局するもの
Ⅰb 期 浸潤が子宮筋層1/2以内のもの
Ⅰc 期 浸潤が子宮筋層1/2をこえるもの
Ⅱ期 癌が体部および頸部に及ぶもの
Ⅱa 期 頸管腺のみを侵すもの
Ⅱb 期 頸部間質浸潤のあるもの
Ⅲ期 癌が子宮外に広がるが、小骨盤をこえていないもの、または所属リンパ節転移のあるもの
Ⅲa 期 漿膜ならびに/あるいは付属器を侵す、ならびに/あるいは腹腔細胞診陽性のもの
Ⅲb 期 腟転移のあるもの
Ⅲc 期 骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節転移のあるもの
(注:子宮傍結合織浸潤例はⅢc期とする)
Ⅳ期 癌が小骨盤腔をこえているか、明らかに膀胱または腸粘膜を侵すもの
Ⅳa 期 膀胱ならびに/あるいは腸粘膜浸潤のあるもの
Ⅳb 期 腹腔内ならびに/あるいは鼠径リンパ節転移を含む遠隔転移のあるもの
〔分類にあたっての注意事項〕
(1)初回治療として手術がなされなかった例(放射線療法など)には、従来からの臨床進行期分類が適用される。
(2)各期とも腺癌の組織学的分化度により、それぞれ亜分類される。
(3)0期は治療統計に含まれない。FIGOでは0期は設定されていないが、日本産科婦人科学会では従来の分類との整合性により0期を設定した。
(4)所属リンパ節とは、基靭帯リンパ節、仙骨リンパ節、閉鎖リンパ節、内腸骨リンパ節、鼠径上リンパ節、外腸骨リンパ節、総腸骨リンパ節、および傍大動脈リンパ節をいう。
(5)子宮傍結合織浸潤例はⅢc期とする。
(6)本分類は手術後分類であるから、従来Ⅰ期とⅡ期の区別に用いられてきた部位別掻爬などの所見は考慮しない。
(7)子宮筋層の厚さは腫瘍浸潤の部位において測定することが望ましい。
〔子宮体部腺癌の組織学的分化度〕
すべての類内膜癌は腺癌成分の形態によりGrade 1、2、3に分類される。
Grade 1: 充実性増殖の占める割合が腺癌成分の5%以下であるもの
Grade 2: 充実性増殖の占める割合が腺癌成分の6~50%のもの。あるいは充実性増殖の割合が5%以下でも細胞異型の著しく強いもの
Grade 3: 充実性増殖の占める割合が腺癌成分の50%を超えるもの。あるいは充実性増殖の割合が6~50%でも細胞異型の著しく強いもの
〔組織学的分化度に関する注意〕
(1)漿液性腺癌、明細胞腺癌、扁平上皮癌は核異型によりGradeを判定する。
(2)扁平上皮への分化を伴う腺癌のGradeは腺癌成分によって判定する。
B. 臨床進行期分類(日産婦 1983,FIGO 1982)
0 期 子宮内膜異型増殖症、上皮内癌
組織所見が悪性を疑わせるが決定的ではない
Ⅰ期 癌が子宮体部に限局する(子宮峡部を含む)。これを2 群に分ける。
Ⅰa 期 子宮腔長が8cm 以下のもの
Ⅰb 期 子宮腔長が8cm をこえるもの
Ⅱ期 癌が体部、および頸部に及ぶ
Ⅲ期 癌が子宮外に広がるが、小骨盤をこえていない
Ⅳ期 癌が小骨盤をこえるか、明らかに膀胱または直腸の粘膜を侵す
Ⅳa 期 膀胱、直腸、S状結腸または小腸などの隣接臓器に広がったもの
Ⅳb 期 遠隔転移のあるもの
腺癌については、その分化度を以下のごとく群別する.
G1 高分化型腺癌
G2 一部充実性の中分化型腺癌
G3 主に充実性または完全な未分化癌
GX 組織分化度がわからないもの
C. TNM 分類(UICC 1990)
T―原発腫瘍
T0 原発腫瘍を認めないもの
Tis 上皮内癌(子宮内膜異型増殖症)
T1 癌が子宮体部に限局するもの
T1a 子宮内膜に限局するもの
T1b 浸潤が子宮筋層1/2 以内のもの
T1c 浸潤が子宮筋層1/2 をこえるもの
T2 癌が子宮体部および頸部に及ぶもの
T2a 頸管腺のみを侵すもの
T2b 頸部間質浸潤のあるもの
T3 癌が子宮外に広がるが小骨盤をこえていないもの。または所属リンパ節転移のあるもの
T3a 漿膜ならびに/ あるいは付属器を侵す、ならびに/ あるいは腹腔細胞診陽性のもの
T3b 腟転移のあるもの
T4 膀胱ならびに/ あるいは腸粘膜浸潤のあるもの。
TX 原発腫瘍が評価できないもの
N―所属リンパ節
N0 所属リンパ節に転移を認めない
N1 所属リンパ節に転移を認める
NX 所属リンパ節転移を判定するための最低必要な検索が行われなかったとき
所属リンパ節は、閉鎖リンパ節、内腸骨リンパ節、外腸骨リンパ節、鼠径上リンパ節、総腸骨リンパ節、仙骨リンパ節、基靭帯リンパ節および傍大動脈リンパ節である。
M―遠隔転移
M0 遠隔転移を認めない。
M1 遠隔転移を認める。
MX 遠隔転移を判定するための最低必要な検索が行われなかったとき。
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子宮体癌の治療法
子宮体癌の根本的治療法は手術療法と放射線療法である.他に、化学療法、ホルモン療法がある。子宮体癌の治療の主体は手術療法であり、第一選択である。放射線療法が適応となるのは、手術不能と考えられる進行症例、重篤な合併症、高齢者および肥満などのため手術リスクの高い症例、手術拒否症例、である。本邦では放射線療法が単独で用いられることは少ない。日産婦婦人科腫瘍委員会報告(1999年度子宮体癌患者年報)によるとⅠ期~Ⅳ期まで合わせて放射線単独治療例は0.7%でしかない。
子宮体癌の予後不良因子として、組織学的分化度G3、筋層浸潤1/2以上、頸部浸潤、骨盤リンパ節転移、子宮外浸潤、付属器転移などがあげられるが、手術症例でこれらにあてはまるものに対しては、術後放射線療法または術後化学療法が行われている。
再発癌の治療については、化学療法、放射線療法、ホルモン療法が組み合わされて用いられる。
(1)手術療法
準広汎子宮全摘術または広汎子宮全摘術+骨盤リンパ節郭清+腹部大動脈周囲(傍大動脈)リンパ節郭清または生検が行われる。
0期(複雑型異型内膜増殖症)や組織学的分化度G1で術前にMRI などで筋層浸潤がないと判断される初期症例では単純子宮全摘出術(筋膜外術式)が行われ、原則として両側付属器と腟壁を1cm付けて摘出する。
広汎子宮全摘術を行うのはⅡ期やⅢ期症例の場合である。
体癌の臨床進行期と選択すべき術式との対応は頸癌ほど明確にされておらず、リンパ節郭清にしても骨盤内にとどめるか、傍大動脈節まで行うか、郭清か、生検か、など標準化されたものはいまだない。したがって個々の症例に応じて選択される。
(2)放射線療法
根治的照射と術後照射がある。根治的照射は通常全骨盤照射と腔内照射を組み合わせて行う。Ⅰa期G1やⅣb期症例で止血目的の時には腔内照射のみを行うこともある。
術後照射は予後不良因子がある場合に行われ全骨盤外部照射で45~50Gy 照射する。
(3)化学療法
子宮体癌の化学療法は手術や放射線療法と併用して行われるが、手術療法が不可能な進行症例や、放射線療法が行えないような再発症例では化学療法が第一選択となる。
手術症例で予後不良因子のある症例では術後化学療法が行われる。
術後の追加治療として放射線治療と化学療法のどちらが有効であるかについてはいまだ結論はでていない。
化学療法ではCAP 療法(cyclophosphamide+adriamycin+cisplatin)が最も汎用されてきたregimen である。最近ではTJ 療法(paclitaxel+carboplatin)が、子宮体癌でも有効であるという報告が多くみられるようになり注目されている
ただし果たして化学療法が子宮体癌の予後を改善するかどうかについてはいまだ結論はでていない。
(4)ホルモン療法
高分化型腺癌の中には、高用量の酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)(400~600mg_day)が有効なものがあり、再発症例に用いられるほか、若年者で子宮の温存を強く希望するⅠaG1期症例で用いられることがある。
若年子宮体癌は40歳以下の症例をいうが、月経不順、不妊の患者に多く、不妊治療中に発見されることもある。筋層浸潤がないかどうかはMRIなどの画像診断によるが、実際の進行期と異なる可能性もあり、その点についての充分なインフォームドコンセントが必要である。MPA 投与中には1カ月ごとに内膜の組織検査を行い、改善がみられない時には子宮全摘もやむを得ない。また子宮鏡および子宮鏡下生検による経過観察も有用である。
高用量のMPA の重篤な副作用として血栓症がある。若年子宮体癌の患者では、肥満、高血圧、高脂血症がみられることもあり、凝固系の検査(thrombin anti-thrombin complex など)が必要であり注意を要する。
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