卵巣癌、化学療法
卵巣癌は化学療法が奏功する腫瘍である。一般に進行癌が多く、早期癌でもしばしば再発することから、多くの症例が化学療法の対象となる。
上皮性卵巣癌の標準的寛解導入・補助化学療法の変遷(CAP療法以降)
1.1980年代後半から1990年代前半にかけては、CAP療法(シクロホスファミド+ドキソルビシン+シスプラチン)あるいはCP療法(シクロホスファミド+シスプラチン)が標準治療とされた。 GOG: Gynecologic Oncology Group
GOG47(1986年):CA療法(シクロホスファミド+ドキソルビシン)よりシスプラチンを含むCAP療法が、奏功率、生存率、無病期間において優れていることが報告された。
GOG52(1989年):CP療法とCAP療法の比較試験で、両者に奏功率、生存率、無病期間に差がないことが報告された。
2.TP療法(パクリタクセル+シスプラチン)とCP療法の比較試験が施行されて、TP療法の有益性が示され、TP療法が標準治療となった。
GOG111(1996年):CP療法 vs TP療法の比較試験が行われ、これによりTP療法の優位性が示された。
OV-10(1998年):GOG111の追試が行われ、同様の結果が得られた。
3.プラチナ製剤としてカルボプラチンとシスプラチンを比較した場合、抗腫瘍効果は同等であるが、毒性の軽減と簡便性によりカルボプラチンが選択されることが多い。TJ療法(パクリタクセル+カルボプラチン)は、現時点での標準治療として定着している。
GOG158(1999年):TP療法 vs TJ療法の比較試験が行われ、両者の抗腫瘍効果は同等であるものの神経毒性に関してはTJ療法の方が軽度であることが示された。
4.TJ毎週投与(weekly TJ)療法
以下の点より注目されている。
a.標準的な投与に比べて骨髄抑制が有意に低い。
b.その他の副作用では有意差はみられない。
c.標準的な投与に比べて奏功率は差がない。
5.TJ療法とDJ療法(ドセタキセル+カルボプラチン)とを比較するphase Ⅲ study(SCOTROC: Scottish Randamized trial in Ovarian Cancer、2001年)で、奏功率、progression free survivalで両者に差を認めなかった。長期予後に関する結論がまだ出ていないので、DJ療法を卵巣癌の標準初期治療とするには時期早尚である。合併症として末梢神経障害が危惧される患者に対しては、DJ療法を選択し施行することも十分に想定される。
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胚細胞腫瘍の初回化学療法
BEP療法(ブレオマイシン+エトポシド+シスプラチン)が標準的治療である。
一般的に、完全摘出例には腫瘍マーカーが陰性化していれば3コースで終了し、不完全摘出例にはマーカー陰性化後さらに1~2コースを追加することがある。
二次発癌:エトポシド投与により急性白血病と骨髄異形成の発生率が増大する。
再発例に対する化学療法(例):
・VeIP療法(ビンブラスチン、イホスファミド、シスプラチン)
・VIP療法(エトポシド、イホスファミド、シスプラチン)
・TIP療法(パクリタクセル、イホスファミド、シスプラチン)
※ シクロホスファミドは卵巣毒性が強い。
****** 問題と解答
Q469 卵巣癌に対する化学療法に関する記述で正しいのはどれか。2つ選べ。
a)CAP療法はCP療法に比較し、奏功率、生存率ともに有意に高い
b)paclitaxelのDLT (dose limiting factor)は好中球減少、神経障害、血圧低下である
c)docetaxelのDLT (dose limiting factor)は好中球減少である
d)paclitaxelはその薬理作用から腹腔内投与は不可能である
e)docetaxelはweekly投与には適していない
解答:b、c
a)GOG52(1989年):CP療法とCAP療法の比較試験で、両者に奏功率、生存率、無病期間に差がないことが報告された。
b)投与量規制因子(dose limiting factor, DLF)。paclitaxelの最大投与量規制因子は神経毒性であった。
c)DJ療法には好中球減少が多く認められた。
d)GOG172では、Ⅲ期で残存腫瘍径1cm以下の症例に対し、TP(paclitaxel、cisplatin)の腹腔内投与群と静脈内投与群を比較し、progression free survivalの中央値は24.3か月、19.3か月と、腹腔内投与群で有意な延長が認められた。
e)docetaxelでのweekly投与も実施されている
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Q470 卵巣癌に対する化学療法の記述で正しいのはどれか。2つ選べ。
a)TJ療法とDJ療法の奏功率は同等とみなされる
b)TJ療法とDJ療法による好中球減少の程度は同等である
c)DJ療法が現在の標準的治療とされる
d)腹腔内投与は微小な腹腔内残存病変に対する効果が認められている
e)TP療法はTJ療法に比較し、末梢神経障害が少ないとされる
解答:a、d
a)c)TJ療法(パクリタクセル+カルボプラチン)とDJ療法(ドセタキセル+カルボプラチン)とを比較するphase Ⅲ study(SCOTROC: Scottish Randamized trial in Ovarian Cancer、2001年)で、奏功率、progression free survivalで両者に差を認めなかった。長期予後に関する結論がまだ出ていないので、DJ療法を卵巣癌の標準初期治療とするには時期早尚である。合併症として末梢神経障害が危惧される患者に対しては、DJ療法を選択し施行することも十分に想定される。
b)TJ療法に神経毒性が多く出現し、DJ療法に好中球減少症が多く認められる。
e)GOG158(1999年):TP療法 vs TJ療法の比較試験が行われ、両者の抗腫瘍効果は同等であるものの神経毒性に関してはTJ療法の方が軽度であることが示された。
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Q471 再発卵巣癌に対する治療に関する記述で正しいのはどれか。1つ選べ。
a)再発癌に対しては手術が第一選択となる
b)初回治療修了後6ヶ月以内の再発は、薬剤抵抗性である可能性が高い
c)初回治療終了後6ヶ月以降の再発に対しては、薬剤の変更が必要である
d)シスプラチン耐性症例に対してはCPT-11が第一選択となる
e)再発癌に対しては単剤よりも多剤併用療法のほうが効果が高い
解答:b
a)孤立局在性の再発巣に対しては第二次腫瘍縮小手術の選択肢があるものの、長期予後に関するエビデンスには乏しい。
b)c)初回治療後6ヶ月以上経過してからの再発例に対しては、初回治療薬剤に感受性があるとされることから、同様の薬剤投与が試みられる。一方、6ヶ月以内の再発例は、薬剤抵抗性と考えられ、交差耐性のない薬剤が選択されるものの標準的治療法は確立されてない。
d)Platinum製剤に耐性である場合、paclitaxelは40%、docetaxelは24~40%の奏効率を示すことよりsecond lineの候補となる。一方、paclitaxel耐性に対しては、23%の奏効率を示すdocetaxelが候補となる。
e)再発癌に対して単剤と多剤併用のどちらが有効かに関してはエビデンスに乏しい。再発症例の大多数がpalliative careでありQOLの面からもweekly paclitaxel、weekly TJ、weekly docetaxelなどが選択肢になり得る。
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Q472 卵巣癌化学療法でのG-CSF製剤使用について正しい用法はどれか。
a)好中球数500(白血球数1000/μl)未満で投与、好中球数3000(白血球数6000/μl)以上で中止
b)好中球数500(白血球数1000/μl)未満で投与、好中球数5000(白血球数10000/μl)以上で中止
c)好中球数1000(白血球数2000/μl)未満で投与、好中球数3000(白血球数6000/μl)以上で中止
d)好中球数1000(白血球数2000/μl)未満で投与、好中球数5000(白血球数10000/μl)以上で中止
e)好中球数2000(白血球数4000/μl)未満で投与、好中球数5000(白血球数10000/μl)以上で中止
解答:b
G-CSF製剤の癌化学療法による好中球減少症に対する適応は好中球数が500/μl(白血球数1000/μl)未満の時である。好中球数が5000/μl(白血球数10000/μl)以上で投与中止と規定されている。
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Q473 次の抗癌剤のうち血小板減少が投与量規制因子となっているものはどれか。
a)シスプラチン
b)カルボプラチン
c)エトポシド
d)シクロフォスファミド
e)パクリタクセル
解答:b
血小板減少が用量規制因子となっている薬剤:カルボプラチン
マイトマイシンCによる血小板減少が高度となる症例もあるので注意が必要である。
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Q474 抗癌剤投与時の悪心・嘔吐対策で誤っているものはどれか。
a)初回化学療法時の制吐管理はとくに重要である
b)CAP療法では即時型の悪心・嘔吐のみならず遅延型の悪心・嘔吐も発現し管理に苦慮することがある
c)CAP療法に伴う悪心・嘔吐に対しては、5-HT3受容体拮抗剤を第一選択にすべきである
d)5-HT3受容体拮抗剤は即時型、遅延型嘔吐いずれにも同様に有効である
e)制吐方法には個別化が重要である
解答:d
d)5-HT3受容体拮抗剤は、即時型の嘔吐に対しては有効であるが、遅延型の嘔吐に対しては有効でない。
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Q475 抗癌剤投与時の腎・尿路障害について誤っているものはどれか。
a)cisplatin投与時の腎障害の指標としてはクレアチニンクリアランスが鋭敏であり、60ml/分以下の症例には投与を控えるべきである
b)cisplatin投与時の腎毒性軽減処置として行われる電解質輸液は投与時のみならず投与前後も十分な量を行うべきである
c)cisplatin投与時の腎毒性軽減のためチオ硫酸ソーダが用いられることがある
d)carboplatinはcisplatinに比べ腎障害の発現頻度が高い
e)ifosfamideの代表的な尿路系障害に出血性膀胱炎がある
解答:d
腎毒性を用量規制因子とする代表的なものは、cisplatinとifosfamideである。
b)c)cisplatinでは十分な輸液と利尿剤により、腎毒性の軽減が図られる。
d)carboplatinはcisplatinに比べ腎障害の発現頻度が低い
e)ifosfamideは急性尿細管障害のほかに出血性膀胱炎を40~50%の頻度で起こすことから、中等度以上のifosfamideやcyclophosphamideを投与する時には、十分輸液をして尿量を100ml/時以上に維持する一方、両薬剤の腎尿路障害に特異的なchemoprotectantである2-mercaptoethane sulfonate(メスナ)を用いることが必要である。
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Q476 抗癌剤投与による神経障害で誤っているものはどれか。
a)神経障害の発生・推移は薬剤の投与回数・用量に関係する
b)cisplatinの末梢神経障害は、知覚神経障害が主体である
c)cisplatinの投与中に難聴をきたすことがあるので定期的に聴覚検査を行うことが望ましい
d)paclitaxelの方がdocetaxelより抹消神経障害の頻度が高い
e)抗癌剤による神経障害にはビタミンB12が著効を示す
解答:e
a)b)cisplatinによる末梢神経障害は、四肢の感覚障害を主徴とした知覚神経障害が主体であり、cisplatinの総投与量が200~300mg/m2より発現し、500~600 mg/m2でほぼ全例に何らかの神経障害が認められる。
d)TJ療法に神経毒性が多く出現し、DJ療法には好中球減少症が多く認められる。
e)cisplatinの神経障害では、回復にも時間を要し、著効薬もない。
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