ある産婦人科医のひとりごと

備忘録、テーマはいろいろ

婦人科疾患のCT診断

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読影に必要な基礎知識

1.原理と歴史

CT は、基本的には撮影される人体を挟んでX 線管球と検出器を対向させ、多くの方向からX 線を照射して人体のX 線吸収値を測定し、その情報をコンピュータ処理して画像の再構成を行い、人体の横断面の断層像を得る方法である。それが、検出器が多くなることで感度が高くなり、回転が早くなることで撮影時間が短くなった。螺旋状にスムーズに動かして撮影できたことからヘリカルCT と呼ばれる三次元表示も可能となり一般化しつつある。

2.読影に必要な理論

CT 値:水が基本。X 線吸収係数を水のX 線吸収係数を基準として相対値として表示する。水のCT 値は0 である。CT 値は骨が最も高くて1,000(最も白く映る)、順に軟部組織や種々の病巣は-100~-50(濃淡種々のグレー)、水は0(薄い黒)、脂肪組織は-100~-50(黒)そして空気は-1,000(最も黒い)である。

画素(ピクセル):画素の数が多いほど画像はきめ細かく、小病変を見つけやすいが、反面、画像のコントラストは悪くなる。

ウィンドウ幅、ウィンドウレベル:白から黒までをCT 値で2,000段階に分けても、わずかなCT 値の違いは人間の目にはわからない。そこで、注目したい病変部のCT 値を新たに0 として(ウィンドウレベル)ある一定のCT 値の範囲のみ(ウィンドウ幅)を濃度差として表示すると、観察したい病変はより効率よく描出しうる。

アーティファクト:存在しない像が抽出されることで、撮影部位の動きによるもの、高吸収あるいは低吸収物質の存在によるもの、骨組織の影響によるものおよび装置によるものがある。

部分容積効果:CT 像はある一定の厚みのスライスで抽出されており、そのなかの組織でX 線吸収係数の異なった2 種類の物質が含まれていると、CT 値がこの2 種の物質の平均値として表されるため、この2 つの物質の辺縁の分解能を低下させる現象。

3.CT 検査の実施にあたって注意すべきこと

1)適応:婦人科疾患では、画像検査としてまず行うべきは超音波検査である。その次の段階としてねらう病変・病態に応じて、CT を行うべきか、MRI を行うべきか、考えるべきである。

CT の利点としては、
① 広い範囲を短時間でスキャンできること
② 石灰化の描出に優れていること
③ 脂肪組織の抽出に適すること

①については、癌の広がりの検索や骨盤リンパ節および傍大動脈リンパ節転移の検索を行う際に、上腹部から骨盤のCT を撮影しているが、造影CT を含めても撮影は10分弱で済む。一方、MRI の方は以前より撮影時間は短縮されてきたが、骨盤MRI で造影すると30分、造影なしでも20分以上かかる。したがって、MRI の方はCT に比べこなせる患者数に制限が大きい。

②、③の所見を含んでいる皮様嚢胞腫の診断には優れている。

CT の欠点としては、
① 軟部組織の抽出において、組織コントラストはMRI に比べ劣る
② MRI ではあらゆる断面の撮影が可であるが、CT は横断像しか得られない

①について、子宮の腫瘍では頸癌や体癌でも周囲組織とコントラストが不十分で腫瘍を描出できないことも多い。良性腫瘍である子宮筋腫の抽出も不十分で、子宮腺筋症との鑑別も困難である。

②について、通常は横断面像を何枚もみながら頭のなかで立体画像に構成していかねばならない。したがってMRI の撮影に比べ、より断面像ごとの解剖の理解が必要となる。

以上から、子宮疾患については、良性疾患に関してCT の適応はほとんどないと考えられる。悪性腫瘍においても主病変そのものの描出は困難であり適応ではないが、広い範囲のリンパ節や遠隔転移の診断に適応があると考えられる。

2)CT 検査実施時の注意点

前処置:造影剤を使用する患者では、検査前の絶食を原則とする。脱水状態ではむしろ危険なので、適度の水分摂取は可とする。子宮頸癌などの腫瘍の膀胱への浸潤を観察するために適度な蓄尿をしたり、骨盤CT を撮影する際には、時に、目印として腟内タンポン挿入などを行う。

造影剤使用時の注意点:

造影剤使用の目的は以下の3 つの点に集約される。
① 病変の検出能を高めること
② 病巣内の血行動態を描出すること
③ 解剖学的構造,特に血管との関係をよく描出すること

以前はヨードテスト(プレテスト)として、病棟・外来などで少量の造影剤を静脈注射して造影剤過敏症の検査をした時期もあったが、信頼度に乏しいことが明らかとなり、現在は不必要であるとされている。大事なことは、検査前に十分な説明とヨード過敏、アレルギー歴などの問診を行うことと、CT 室で造影剤投与時に確実な静脈確保を行ったあと救急対応まで意識して検査を行うことである。

放射線被曝の問題:X 線使用時に常に問題となることであるが,国際放射線防護委員会(ICRP)1990年勧告では、妊娠可能年齢の女性および妊婦に対する医療行為の適応の決定については、これまでの勧告に比べると医療従事者の判断にまかされている部分が多い。ただし確率的影響(性腺被曝による悪性腫瘍,胎児期の被曝による小児癌の発生)に関してはまだ結論は出ておらず、妊婦への放射線照射を控えることはもちろんのこと、妊娠可能な若い女性についても検査適応の正確な判断と、無駄な被曝のない慎重な検査を行うべきである。

各種疾患・病態におけるCT の有用性と限界

まず正常CT 解剖について知っておくべき事項がいくつかある。子宮、卵巣は可動性が高いため思わぬ部位まで移動しているようなことがある。生殖器も年齢と共に大きく変化する。骨盤内腸管の長さや走行は一定していない。つまり個人差が大きいことを知っておく必要がある。

1.MRI と比較したCT の適応

以下の項目は、代表的な産婦人科疾患について、MRI と比較する形でCT の適応を述べた。
1)超音波の次に画像診断を行う際にMRI と共にCT が必要な疾患
 子宮体癌、子宮頸癌、卵巣癌
2)超音波の後,CT かMRI のいずれかでよい疾患
 卵巣類皮嚢胞腫、卵巣嚢胞腺腫
3)基本的にCT が適応とならない疾患
 子宮筋腫、子宮腺筋症、双角子宮、内膜症性嚢胞、卵巣線維腫
4)妊娠患者のためCT が適応とならない疾患
 胎児奇形、母体の腫瘤性病変、前置胎盤のうち、超音波診断では確診できない場合で、なおかつ2nd trimester 以降の場合。

2.各疾患・病態のCT 像

各疾患や病態のCT 像による解説をCT が適応となる疾患について行う。その際、CT 像の読影における注意点を一部MRI との比較で述べる。

1)CT は横断像しか得られないため、矢状断像が有用な子宮疾患の診断には不利になる。またCT は組織コントラスト分解能が低いため、子宮の内部構造を明瞭に描出できず、腫瘍の検出能も低い。このためMRI に比べて、局所の病巣を抽出することについてはその有用性は低い。

a.子宮頸癌

主病変の描出はある程度は可能だが、傍結合織、膀胱・直腸などへの浸潤の評価は困難である。頸部間質への癌の深達度の評価にはMRI が必要である。CTはリンパ節転移が疑われた時の上腹部等の検索などに有用である。

b.子宮体癌

主病変の描出は子宮溜水腫が合併している時は可能であるが、基本的にはMRI が優れている。筋層浸潤の評価はCT では困難である。頸癌の場合と同じく、進行癌が疑われた時の上腹部等の検索などに有用である。

2)卵巣腫瘤の多くは嚢胞成分を有しているが、嚢胞部分と充実性部分の区別にCT、特に造影CTは有用である。ただし、嚢胞内容液については、漿液性内容液、粘液性内容液の鑑別にMRI がより有用で、特に、内膜症性嚢胞のような血腫の診断にはMRI が必須である。一方、石灰化成分や脂肪の判定にはCT の有用性は高い

a.良性嚢胞性卵巣腫瘍

薄い壁であり、内部は水と同濃度。漿液性の場合は単房性,ムチン(粘液)性の場合は多房性のことが多い。いずれにしても壁が薄いことと充実性部分がないことをよく確認することが大切である。

b.卵巣類皮嚢胞腫(皮様嚢腫)

腫瘍の中に非常に低濃度の脂肪成分が認められる。毛髪塊や歯牙や軟骨などによる石灰化の存在も診断の一助となる。嚢胞内に実質成分や水と脂肪による液面形成がみられることもある。脂肪成分の判定にCT は有用であるが、最近は脂肪抑制MRI などを用いてMRI で診断することが多い。

c.悪性嚢胞性卵巣腫瘍

大きさが6cm 以上で、充実性部分が存在する、壁が厚い時や隔壁厚が3mm 以上あるいは結節形成などの所見があれば悪性を疑う。骨盤壁や骨盤内臓器への浸潤など含めてMRI で診断することがほとんどである。

3)転移リンパ節については、CT、MRI ともに腫大したリンパ節の大きさを基準に診断しているため、診断能に差はない遠隔転移の評価については、短時間に広い範囲を検査できるCT の有用性が高い。卵巣癌の症例では、範囲を広げて、腹膜、腸間膜、大網への播種や腹水の存在、傍大動脈リンパ節まで検索するのが常であるが、今のところCT が有用である。

4)悪性腫瘍では体の各部への転移についても考えておくべきである。胸部X 線で検出された肺内病変(肺転移)の精査にはCT がMRI より適している。脳転移が疑われる時もあるが、頭部の腫瘍性疾患に関しては、ある程度の大きさであればCT でもMRIでも診断可能である。肝、胆、膵、消化管領域の腫瘤性病変もCT の適応となる。

****** 問題と解答

Q46 誤っているものを選べ。
a)○ 一般的にMRI はX 線CT より腫瘍の質的診断において有用性が高い
b)○ X 線CT はMRI と比較して短時間で広い範囲の撮影が可能である
c)○ 妊娠中に母体や胎児の病態の検索にはMRI が有用である
d)○ 造影CT の際に,前もって造影剤の注入などのプレテストを行うことは必須ではない
e)× CT 値は,脂肪組織のX 線吸収値を基準として定められている

解答:e

CT 値:水が基本。X 線吸収係数を水のX 線吸収係数を基準として相対値として表示する。水のCT 値は0 である。CT 値は骨が最も高くて1,000(最も白く映る)、順に軟部組織や種々の病巣は-100~-50(濃淡種々のグレー)、水は0(薄い黒)、脂肪組織は-100~-50(黒)そして空気は-1,000(最も黒い)である。

******

Q47 誤っているものを選べ。
a)○ X 線CT 画像で,最も白く映るのは骨組織や石灰化部位である
b)× X 線CT は、子宮筋腫と子宮腺筋症を鑑別するのに有用である
c)○ 骨盤リンパ節転移の検索では,CT とMRI は同等である
d)○ X 線CT は,MRI に比べ呼吸性変動の影響を受けにくい
e)○ 造影CT を予定する場合は撮影前の禁食が必要である

解答:b

X 線CT は、良性腫瘍である子宮筋腫の抽出も不十分で、子宮腺筋症との鑑別も困難である。

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Q48 誤っているものを選べ。
a)× 子宮頸癌や子宮体癌の頸部浸潤の検索にはX 線CT が有用である
b)○ CT において異なる組織の境界面が不鮮明になる現象として部分容積効果がある
c)○ ウィンドウ幅を小さくするとコントラストの強い画面に,これを大きな値に設定するとコントラストの弱い画面になる
d)○ ウィンドウレベルは低い値に設定すれば濃度の薄い画像に,これを高い値に設定すれば濃度の濃い画像になる

解答:a

子宮頸癌主病変の描出はある程度は可能だが、傍結合織、膀胱・直腸などへの浸潤の評価は困難である。頸部間質への癌の深達度の評価にはMRI が必要である。CTはリンパ節転移が疑われた時の上腹部等の検索などに有用である。

子宮体癌主病変の描出は子宮溜水腫が合併している時は可能であるが、基本的にはMRI が優れている。筋層浸潤の評価はCT では困難である。頸癌の場合と同じく、進行癌が疑われた時の上腹部等の検索などに有用である。

部分容積効果:CT 像はある一定の厚みのスライスで抽出されており、そのなかの組織でX 線吸収係数の異なった2 種類の物質が含まれていると、CT 値がこの2 種の物質の平均値として表されるため、この2 つの物質の辺縁の分解能を低下させる現象。

ウィンドウ幅、ウィンドウレベル:白から黒までをCT 値で2,000段階に分けても、わずかなCT 値の違いは人間の目にはわからない。そこで、注目したい病変部のCT 値を新たに0 として(ウィンドウレベル)ある一定のCT 値の範囲のみ(ウィンドウ幅)を濃度差として表示すると、観察したい病変はより効率よく描出しうる。

******

Q49 誤っているものを選べ。
a)○ 体動や腸管の蠕動によるアーティファクトは高速CT の導入により改善がみられた
b)○ 骨盤部の金属(人工関節など)や腸管に遺残するバリウムの存在は,高いX 線吸収値により近接部へのアーティファクトを生じ著しい画質の劣化につながる
c)○ ヘリカルCT の登場で高精度の三次元画像の作成が可能となった
d)× 造影CT では,正常子宮体部筋層は弱く,内膜は強く造影され,中心部は高吸収域として認められる

解答:d

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Q50 誤っているものを選べ.
a)× 腹水の存在はたとえ少量でも病的所見である
b)○ 子宮体癌の筋層浸潤の程度は,X 線CT よりもMRI の方が診断精度が高い
c)○ 子宮頸癌は,X 線CT では患部と正常頸管筋層に濃度差がなく描出が困難である
d)○ X 線CT では,卵巣腫瘍内の隔壁や充実成分の有無は造影により明瞭となる
e)○ X 線CT では,腹腔内播種やリンパ節転移,肝転移も造影検査が有用で,かつ水腎症の有無を含めて一度に検査できる利点がある

解答:a