ある産婦人科医のひとりごと

備忘録、テーマはいろいろ

外陰の腫瘍・類腫瘍

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(1) 外陰原発の悪性腫瘍

外陰に原発する悪性腫瘍の発生頻度は全女性性器癌の約4%とされる。すなわち女性人口100万人当たりの年間発生数が10例前後と推定される比較的まれな疾患である。

外陰悪性腫瘍の組織型は、扁平上皮癌がその大部分を占め、悪性黒色腫がそれに次ぐ。

扁平上皮癌 Squamous cell carcinomaは、角化型 Keratinizing、非角化型 Nonkeratinizing、類基底細胞型 Basaloid、疣状型 Verrucous、湿疣型(コンジローマ様癌) Warty (condylomatous)、その他 Othersに分類される。このうち類基底細胞型、湿疣型は、ヒトパピローマウイルス16型との関連が指摘されている。

臨床進行期分類として国際産科婦人科連合(International Federation of Gynecology and Obstetrics: FIGO)の分類が使われている。

ちなみにFIGOのAnnual reportでの5年生存率は、Ⅰ期69.4%、Ⅱ期48.8%、Ⅲ期31.7%、Ⅳ期12.6%である。

外陰悪性腫瘍の組織型と頻度
組織型               %
扁平上皮癌 Squamous    86.2
悪性黒色腫
Melanoma      4.8
肉腫 Sarcoma          2.2
基底細胞癌 Basal cell     1.4              
バルトリン腺癌
Bartholin gland carcinoma
   扁平上皮癌 Squamous     0.4 
   腺癌 Adenocarcinoma      0.6
腺癌 Adenocarcinoma            0.6
未分化癌 Undifferentiated     3.9

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外陰癌の進行期分類

1994年FIGO進行期分類

0期:上皮内癌

Ⅰ期:外陰または会陰に限局した最大径2cm以下の腫瘍。リンパ節転移はない。
 Ⅰa期:外陰または会陰に限局した最大径2cm以下の腫瘍で、間質浸潤の深さが1mm以下のもの※。
 Ⅰb期:外陰または会陰に限局した最大径2cm以下の腫瘍で、間質浸潤の深さが1mmを超えるもの。
 ※浸潤の深さは隣接した最も表層に近い真皮乳頭の上皮間質接合部から浸潤先端までの距離とする。

Ⅱ期:外陰および/または会陰のみに限局した最大径2cmを超える腫瘍。リンパ節転移はない。

Ⅲ期:腫瘍の大きさを問わず、
(1) 隣接する下部尿道および/または膣または肛門に進展するもの。
  および/または
(2) 一側の所属リンパ節転移があるもの。

 所属リンパ節:大腿リンパ節鼠径リンパ節

Ⅳa期:腫瘍が次のいずれかに浸潤するもの:
上部尿道、膀胱粘膜、直腸粘膜、骨盤骨および/または両側の所属リンパ節転移があるもの。

Ⅳb期:骨盤リンパ節を含むいずれかの部位に遠隔転移があるもの。

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TNM分類

T- 原発腫瘍
 TX  原発腫瘍の評価が不可能
 T0  原発腫瘍を認めない
 Tis  上皮内癌(浸潤前癌)
 T1  外陰/会陰に限局し、最大径が2.0cm以下
  T1a 間質性浸潤が1.0mm以下
  T1b 間質性浸潤が1.0mmを超える

 T2  外陰/会陰に限局し、最大径が2.0cmを超える
 T3  次のいずれかに浸潤:下部尿道肛門
 T4  膀胱粘膜直腸粘膜上部尿道恥骨

N- 所属リンパ節
 NX  所属リンパ節転移の評価が不可能
 N0  所属リンパ節転移なし
 N1  片側の所属リンパ節転移
 N2  両側の所属リンパ節転移

 所属リンパ節:大腿リンパ節鼠径リンパ節

M- 遠隔転移
 MX  遠隔転移の評価が不可能
 M0  遠隔転移なし
 M1  遠隔転移あり(骨盤リンパ節転移を含む) 

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病期分類

0期  Tis  N0  M0
Ⅰ期  T1  N0  M0
ⅠA期  T1a  N0  M0
ⅠB期  T1b  N0  M0
Ⅱ期  T2  N0  M0
Ⅲ期  T1  N1  M0
     T2  N1  M0
     T3  N0, N1  M0
ⅣA期  T1  N2  M0
      T2  N2  M0
      T3  N2  M0
      T4  Nに関係なく  M0

ⅣB期  T、Nに関係なく  M1

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治療:治療の基本は手術療法であるが、術式については原発巣の摘出方法、リンパ節の郭清範囲によってバリエーションがある。

高齢者が多いため全身状態が不良で手術に適さないこともあり、そのような場合には放射線療法や化学療法、あるいは両者の併用療法が考慮されるが、手術なしではいずれも根治の可能性は低いと考えられる。

Ⅰa 期については鼠径リンパ節転移はないと考えられ、最低1cm 以上病変から離れて切除する根治的外陰部分切除術のみでよいと考えられる。

Ⅰb 期では根治的外陰部分切除術+病変側の鼠径リンパ節郭清術を基本とする。ただし,病変が正中から1cm 以内の場合や、郭清した片側のリンパ節転移が陽性だった場合には両側の郭清を施行する。

Ⅱ期については現在のところこれまで通り広汎外陰切除術+両側鼠径リンパ節郭清が基本と考えられるが、病変が片側に限られる場合には根治的外陰部分切除術と片側のリンパ節郭清術で根治可能としている報告もみられる。

Ⅲ期以上の進行例に対しては病変の完全切除が可能と考えられる場合には広汎外陰切除術および周辺臓器の部分切除さらには骨盤内臓全摘術まで施行する場合もあるが、手術侵襲が大きくなるためにその適応は限定される。このような症例に対し術前に放射線治療、あるいはフルオロウラシル(5-FU)+マイトマイシンC(MMC),5-FU+シスプラチン(CDDP)を併用した化学放射線療法、ブレオマイシン(BLM)を中心とした化学療法を施行してから手術をする試みもなされてきている。

術中の迅速診断にて鼠径リンパ節転移が陽性と診断された場合には、骨盤内リンパ節郭清術を施行せずに鼠径部および骨盤部に放射線療法の追加が勧められる。ただしリンパ節転移が1 個しか認めなかった場合には後療法をせずに慎重な経過観察のみとするという意見もある。

(2) 外陰・腟の悪性黒色腫

外陰・腟に発生する悪性黒色腫は早期に転移を起こしやすく5年生存率も21.7~54%と不良である。

好発部位は大陰唇陰核で特徴的な色素性病変を視認できる。

確定診断には可能な限り病変部の全摘が勧められる。なお現在ではその後のすみやかな手術が可能であれば生検は禁忌とはされていない。

病理診断として、免疫組織染色にてS-100NSEHMB-45などが陽性となり、鑑別に有用である。

治療としては、Ⅰ期では根治的外陰部分切除でも可能と考えられるが、Ⅱ期以上の症例に対して広汎外陰切除、鼠径リンパ節郭清が施行されることが多い。術後の補助療法としてDAVFeron(塩酸ビンクリスチン:VCR、塩酸ニムスチン:ACNC、ダカルバジン:DTIC、インターフェロン:IFN-β)療法などが行われる。

(3) 外陰上皮性腫瘍 vulvar intraepithelial neoplasia: VIN

外陰上皮内腫瘍(VIN)の罹患者数は増加傾向にあり、かつ若年化が世界的に傾向として認められている。

VIN の50~80%にHPV が検出される

VIN1、VIN2、VIN3と3段階に分類される。

Bowen病(Bowen disease):VIN3で基底細胞類似のタイプ。

VIN は多中心性に病変が生じることが多く、腟や子宮頸部にも同様に扁平上皮病変を認める場合が多い。そのために外陰掻痒感、疼痛などを訴えて来院した患者に対する注意深い視診が最も重要である。

VIN は白色、赤色、褐色の平坦または丘疹状に隆起した限局性の病変として認められる。最終診断は組織診によらねばならず積極的な生検が必要である。浸潤をみるためにもメスやKeyes dermatological punch などを用いて皮下組織まで採取するように心掛ける。この際,トルイジンブルーによる染色や酢酸加工した外陰のコルポスコープによる観察も有用である。

VIN1、VIN2では厳重な経過観察も可能であるが、VIN3では外科的切除が基本である。病変が限局している場合には広い局所切除とし、多発性で病変が広範囲に及ぶ場合には単純外陰切除術が確実な方法である。若年者に対しては美容面も考慮し皮下組織を温存して表皮を切除(skinning vulvectomy)し、中間層植皮を併用する手術法も行われている。多発性の病変に対してはCO2レーザーによる蒸散も有効とされているが、美容面では優れているものの確定診断がつかず、浸潤癌の除外など治療前の診断を慎重にすべきである。

(付) Bowen様丘疹症 Bowenoid papulosis
 
若年者に好発する色素沈着を伴った丘疹である。Bowen病と同様の組織像を示すにもかかわらず自然消退することが知られている。HPV16型が関与しているとされる。進行する例もあるともいわれていることから臨床的にはVIN3として取り扱う

(4) Paget病
Paget病は乳腺に好発し、乳腺外に発生したものは乳腺外Paget病と一括される。乳腺外Paget病のなかでは外陰が最も好発部位である。Paget病は通常は扁平上皮に限局する異型腺細胞からなる癌であるが、10~20%には浸潤性腺癌を合併する。若年者はまれで閉経後に好発する。

掻痒感、疼痛などを訴えて受診することが多い。発生は多中心性と考えられるが、受診時には癒合した広い病変として認められ、湿疹様の紅斑に鱗屑(りんせつ)、白斑などを伴うことが多い。湿疹や接触性皮膚炎、カンジダ外陰炎と間違えやすく、難治性の湿疹様の病変に対しては積極的に生検を施行し、確定診断をつけることが勧められる。

病理組織学的診断では、淡明な細胞質をもったPaget細胞を表皮内に認める。毛包、皮脂腺、汗腺などの皮膚付属器を侵襲する像を認めることもある。Paget細胞は免疫染色でCEAEMA低分子ケラチンが陽性で、悪性黒色腫などとの鑑別に有用である。

治療としては、表皮内に留まった病変に対しては健常な皮膚を含めた局所切除が選択される。病変が広ければ単純外陰切除術を施行する場合もある。術前の腫瘍周囲からの多数の生検により切除範囲を決めるか、切除断端を術中迅速診断して腫瘍の残存の有無を調べることが必要である。浸潤した腺癌を合併する場合には通常の外陰癌と同様に扱う

Paget病では乳癌、大腸癌、直腸癌、子宮頸癌などの他臓器の癌を重複する場合が多いとも言われ、検索が必要である。

(5) 尖形コンジローマ
外陰、腟、子宮腟部などの外性器に発生する乳頭状、鶏冠状の隆起性病変で、性感染症の一つである。HPV 6型、11型が関与するとされる。発生、発育には宿主側の免疫状態も強く関与するとされ、免疫の低下している妊娠中や移植手術後、担癌、糖尿病の患者では病変が発症しやすく増悪する傾向がある。

特徴的な肉眼所見から診断は容易であるが、VINとの鑑別が問題となる場合もあり確定診断には全層を含めた生検が必要である。組織学的所見では有棘細胞層の肥厚、表層細胞の角化、錯角化などを認める。表層上皮細胞のkoilocyte(細胞の核周囲が広く、空洞状に抜けて見える)は特徴的である。

内科的治療法としては、ポドフィリン5-FU軟膏ブレオマイシン軟膏などがある。外科的治療としては、レーザーによる蒸散や切除、電気焼灼などがある。性感染症でありパートナーの診断、治療も必要である。