ある産婦人科医のひとりごと

備忘録、テーマはいろいろ

子宮体癌(子宮内膜癌)について

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子宮体癌(子宮内膜癌)は、子宮体部の内膜にできる癌で、従来は日本人には少ない癌と言われていましたが、食生活の欧米化にともなって、近年増加傾向にあります。子宮体癌は、食生活やその人の体質に深く関係があります。高脂肪・高カロリーの食事を好む人、肥満体質の人や糖尿病、高血圧のある人は注意が必要です。また、出産経験のない人や、若い頃排卵障害、ホルモン異常のあった人も危険性が高いことが知られています。年齢的には、45歳以上から増えはじめ、50歳以上の閉経後に多く発生します。

子宮体癌の症状としては、閉経後の不正性器出血や月経の異常が重要です。子宮体癌を早期発見するには閉経期前後の検査が大切です。症状が気になる場合は、自己判断せずに産婦人科でしっかり検査してもらいましょう。

子宮体癌のスクリーニング検査としては、子宮内膜細胞診が一般的です。子宮の内部に細い器具(エンドサイト、エンドサーチetc.)を入れ、子宮内膜の細胞をとって調べる検査で、簡単にでき痛みもほとんどありません。この検査で異常が発見された場合、今度は子宮内膜の組織を一部とって調べます(子宮内膜生検)。経膣超音波検査で、子宮内膜が厚くなっているかどうか?も非常に重要な情報です。

子宮体癌の治療法は手術療法が中心です。手術方法としては、腹式子宮全摘・両側付属器切除(場合により,骨盤~傍大動脈リンパ節郭清術など)が行なわれる場合が多いですが、癌の進行度、糖尿病や高血圧の有無、年齢や肥満の程度など、患者さんそれぞれに最適な手術方法を正確に見きわめることが重要になります。子宮体癌の進行度を正確に見きわめるために、手術前にCTやMRIなどの検査も行なわれます。

手術摘出物の病理検査結果(癌の組織型、筋層浸潤の深さ、癌の広がり具合、リンパ節転移の有無など)によっては、術後の追加治療(化学療法、ホルモン療法、放射線治療など)が必要になる場合もあります。

卵巣がんについて

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●卵巣がんの疫学

卵巣癌は日本で増加傾向にあり、1998年度中に4,173人の女性が卵巣がんで亡くなっています。日本で毎年新たに卵巣がんと診断される人は約6500人程度と推定されます。卵巣がんの約90%は,卵巣の表層を覆う細胞に由来する上皮性のがんです。日本人が卵巣がんにかかるリスクは欧米人に比べると半分以下ですが、この差は最近縮まっています。また、母親や姉妹が卵巣がんである場合は、卵巣がんにかかるリスクが3倍くらい高くなることも知られています。

●卵巣がんはどのように広がってゆくか?

卵巣がんの初期には自覚症状がないので、ほとんどの場合、転移した状態で初めて病院を訪れます。卵巣がんに最もよく起こる転移形式は腹膜播種(種を蒔くように癌細胞が腹膜を広がってゆく転移)です.腹膜播種が進むと腹水が貯まってきます。横隔膜から更に胸腔内に癌が拡がると胸水が貯まってきます。リンパ節転移は、まず、腹部大動脈の周りや骨盤内のリンパ節に転移し、次第に胸部や首のリンパ節にも拡がっていきます。

●卵巣がんの症状

初期の卵巣がんのほとんどは無症状です。なかには、婦人科検診で偶然発見される場合や、下腹部にしこりが触れるとか圧迫感があるなどの症状で婦人科を受診する場合も時にありますが、腹水のために腹部全体が大きくなるとか、胸水で息切れがするなど、癌の転移による症状で初めて異常を自覚する場合が多いのが卵巣がんの特徴です。

●卵巣がんの診断

いかにすれば卵巣がんを初期の段階で発見できるか?
何か効率の良い卵巣がんの検診方法はないか?

婦人科の診察(内診)で骨盤内の腫瘍が疑われる場合は、超音波検査、CT、MRI等の画像診断によって、子宮の腫瘍か卵巣の腫瘍か、腫瘍の内部構造、転移の有無などを詳しく調べます。検査によって、腫瘍の発生部位、良性か悪性かを推定することができます。血液中のCA125 という腫瘍マーカーを測定することは良性、悪性の判定に役立ちます。転移のある卵巣がんではほとんどの人がCA125陽性で、多くは非常に高い値になります。しかし、早期癌では陽性率は低く、また癌がなくても軽度陽性の人もいるので、CA125は卵巣がんの早期発見にはあまり役立ちません。

そこで、無症状の卵巣がんを早期発見する検診方法の研究(腫瘍マーカーでのスクリーニング、経膣超音波による検診など)が、世界中で多く試みられてますが、現在のところ有効な卵巣がんの検診方法は確立されていません。そのため、いまだに初期で発見される卵巣がんは非常にまれで、卵巣がんのほとんどのケースでは、かなり広がった状態で初めて診断されているのが現状です。

子宮筋腫などで開腹手術を行った際に、本人の希望で正常と思われる卵巣も同時に切除して、たまたま偶然に、摘出物の病理検査で卵巣の表層に微小な卵巣がんが発見されることがあります。そのような初期の卵巣がんと考えられるような場合であっても、すでに腹膜播種や少量の癌性腹水が認められることが少なくありません。また、不妊治療などで毎日のように産婦人科で超音波検査による卵巣の観察を実施している患者さんにたまたま卵巣がんが発生したようなケースでも、診断時にはすでに進行した卵巣がんとなっていて腹腔内に広く播種病巣が認められる場合が多いです。従って、『卵巣がんの多くは、卵巣の表面の腹膜を含めた骨盤腹膜の広い領域で同時多発的に発生する』と私は考えています(私見)。

●卵巣がんの治療

治療方法には手術療法、放射線療法、化学療法があります。

卵巣癌の手術方法は、転移の状態(病期)、年齢などによって異なりますが、標準的な手術方法では,両側の卵巣、卵管、子宮を含めて切除し、さらに大網切除(+後腹膜リンパ節郭清)などが行われます.また,腹腔内の転移巣をできる限り切除します。ただし、挙児希望のある若年婦人で癌が片側の卵巣だけに限局し、組織学的にも悪性度が低い場合(分化型腺癌など)は、片側の卵巣および卵管のみ切除して、子宮および健側の卵巣を温存する場合もあります。

卵巣がんでは手術後の残存腫瘍に対して、以前はよく放射線治療が行われましたが、最近では化学療法の方が主に行われています。

抗癌剤を使う治療を化学療法といいます。化学療法は、手術で取りきれなかった癌に対する治療として使われます。卵巣がんは抗癌剤が比較的よく効きます。抗癌剤は、内服されるか、静脈注射、あるいは直接腹腔内に注入されることがあります。抗癌剤を繰り返し使うことによって癌細胞が完全に消滅することもありますから、効果がある限り、ある程度副作用が起こるまで使用します。卵巣がんによく使われる抗癌剤の副作用として、血液中の白血球と血小板の減少、貧血、吐き気や嘔吐、食欲の低下、脱毛、手足のしびれなどがおこります。

初回手術で切除できずに残った癌が化学療法によって縮小し切除可能となった場合には再手術(セカンドルック手術)が行われます。

化学療法と組み合わせて徹底的に実施される手術療法と、卵巣がんに有効な抗癌剤の開発とその副作用対策の進歩などによって、卵巣がんの治療成績は近年飛躍的に向上しつつあります。

上皮性卵巣がんの初回化学療法の標準レジメンは、現在、パクリタクセルとプラチナ製剤の組み合わせとされています。以前と比べると完全寛解率や生存率はかなり改善されてきましたが、卵巣がんの長期生存率は依然として不良であり、5年生存率が約30%、10年生存率が約10%であり、治療成績は現在でも決して良好とは言えません。

出産育児一時金の支給額増額

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分娩を請け負う施設がこれだけ多様化していて、それぞれの施設で出産に要する料金の設定もピンからキリまで相当な幅があるというのに、この出産費用を一律無料化するという政策は、あまりに現実離れしているので、やはり実現性には乏しいようです。しかし、出産育児一時金の支給額が増額されて35万円になるので、ほとんどの妊婦さんにとって出産費用はタダ同然になると思われます。

それよりももっと重要な少子化対策は、『産科医と新生児科医を現在の絶滅の危機から守り、専門医を新たに養成して、各医療圏に適正に配置する』ことだと思います。産科医と新生児科医がこのまま絶滅してしまえば、女性がいくら赤ちゃんを産みたくなっても、どこにも産むところがなくなってしまいます。そういう時代がどんどん現実化しつつあります。産科医と新生児科医を『絶滅危惧種』に指定して強力に保護・育成するような政策が必要だと思います。

****** 朝日新聞、2006年1月13日

猪口氏、「出産無料化」朝令暮改 混乱招き発言修正

少子化対策の一環として出産費用を国などが全額負担する支援策について、猪口少子化担当相は13日、「広く検討することは視野に入る」と発言し、前向きな姿勢を示した。その後、政府内からは打ち消す発言が相次いだ。出産育児一時金の支給増額を盛った来年度予算案が昨年末に決まった直後の新規施策の検討は難しく、安倍官房長官も会見で「猪口大臣が精力的に全国を回っておられて、その中で要望が強かったということだ」と火消しにやっきだった。

(以下略)

(朝日新聞、2006年1月13日)